外壁塗装の見積もりを頼んだら「シンナーが手に入らなくて工事が遅れるかもしれない」と言われて、意味がよくわかりませんでした。「ナフサと塗料ってどんな関係があるの?」「シンナーが足りないとなぜ工事ができないの?」「水性塗料なら大丈夫なの?」と疑問に思っている方も多いはずです。この記事では、ナフサと塗料・シンナーの関係から、2026年現在の現場への影響まで整理します。
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「ナフサと塗料」を簡単にまとめると
塗料に使われる樹脂(アクリル・ウレタン・エポキシなど)と溶剤(シンナー)は、どちらもナフサを出発原料として作られています。
ナフサが不足すると、塗料の「中身(樹脂)」と「薄め液(シンナー)」の両方が同時に影響を受けます。2026年の中東情勢を受けて、シンナーは大手メーカーが最大75%値上げを発表するなど、塗装業界は「材料が手に入らない」という深刻な状況に直面しています。
ナフサとは?塗料との関係を理解しよう
ナフサは原油を蒸留して得られる石油製品のひとつで、プラスチック・合成繊維・合成ゴムなど現代の化学製品のほぼすべての出発原料です。塗料業界では「塗料の血液」とも表現されるほど、深く関与しています。
ナフサと塗料の関係は大きく2つのルートがあります。ひとつは樹脂(塗料の主成分)の原料としてのルート、もうひとつは溶剤・シンナーの原料としてのルートです。この2つが同時にナフサ由来であることが、ナフサ不足が塗装業界に二重の打撃を与える理由です。
ナフサが塗料の「樹脂」になるまで
塗料は大きく分けると「樹脂(主成分)」「溶剤」「顔料(色)」「添加剤」で構成されています。このうち樹脂と溶剤の両方がナフサ由来です。
外壁塗装でよく使われる樹脂の種類と、その原料になる石油化学品の関係は以下の通りです。アクリル樹脂はナフサを分解して得るプロピレンから作るアクリロニトリルを原料とします。ウレタン樹脂はプロピレンから得るプロピレンオキサイドが出発原料です。エポキシ樹脂はベンゼン(ナフサの芳香族留分)由来のフェノールが主な原料です。シリコン樹脂・フッ素樹脂も製造工程でナフサ由来の化学品を使います。
「なんとなく塗料はペンキのイメージで、石油とは関係ないと思っていました。」調べてみるまで、外壁塗装とナフサがこれほど直結しているとは考えていませんでした。あらゆる塗料の骨格がナフサ由来の樹脂でできているという事実は、言われてみれば確かに、という感じでした。
塗料の種類がアクリルだろうとウレタンだろうとシリコンだろうと、すべての樹脂系塗料の原料はナフサにさかのぼります。
ナフサが「シンナー」になるまで
塗料の現場でナフサ不足の影響が最も早く、最も直接的に出たのがシンナーです。
シンナーは塗料を適切な粘度に薄めるための溶剤で、塗装工事では欠かせない材料です。シンナーの主成分は用途によって異なりますが、塗料用シンナーの主成分であるミネラルスピリットは原油の精製物から作られ、強溶剤系シンナーのトルエン・キシレンはナフサの芳香族留分(BTX)そのものです。
ナフサを高温で熱分解・接触改質する過程でベンゼン・トルエン・キシレンが得られ、これがラッカーシンナー・ウレタンシンナー・エポキシシンナーの主要成分として使われます。
石油→ナフサ→シンナー(塗料)という供給の連鎖があり、この最上流のナフサ供給が滞ると、数週間〜1か月のタイムラグで現場へ影響が届きます。
| ナフサ由来の成分 | 主な用途 | 影響度 | |
|---|---|---|---|
| 塗料用シンナー | ミネラルスピリット・トルエン・キシレン | 塗料の希釈・洗浄 | ★★★ 直撃 |
| アクリル樹脂 | アクリロニトリル(プロピレン由来) | 外壁・屋根塗料 | ★★☆ 中程度 |
| ウレタン樹脂 | プロピレンオキサイド(プロピレン由来) | 防水・床塗料 | ★★☆ 中程度 |
| エポキシ樹脂 | フェノール(ベンゼン由来) | 防錆・工場床塗料 | ★★☆ 中程度 |
2026年現在、塗装現場で何が起きているか
2026年2月末のホルムズ海峡封鎖を受けて、塗装業界は急速に追い詰められました。
最初の衝撃は大手塗料メーカーの相次ぐ値上げ発表でした。日本ペイントはシンナー類の75%値上げを発表し、業界に大きな衝撃をもたらしました。関西ペイントは自動車補修用塗料を含む幅広い製品で価格改定、大日本塗料は一部製品で出荷停止が発生し、スズカファインは「企業努力ではもはや吸収不可能」として値上げを実施しました。
価格の問題だけではありません。「マンションの防水塗装、全部ストップしている」という声が福岡県内の塗装業者から上がっており、シンナーの入手困難が工事の物理的な停止につながっています。塗料の納入まで通常1日のところが半月待ちになっているという報告も出ています。
仕事帰りにホームセンターでペンキコーナーを通りかかったとき、油性塗料の棚がいつもより空いているのが目に入りました。「ナフサ不足の影響がここにも来ているんだ」と実感した瞬間でした。
シーリング材・プライマー・防水材もナフサ由来であり、出荷規制や30%を超える値上げが相次いでいます。外壁塗装は塗料だけで完結する工事ではなく、これらの副資材が揃わなければ施工ができないため、現場への影響は複合的に広がっています。
水性塗料は影響を受けないのか
ナフサ不足の話題になると必ず出てくるのが「水性塗料なら大丈夫では?」という疑問です。
結論から言うと、水性塗料は溶剤系塗料と比べてシンナー不足の直接的な影響を受けにくいです。水性塗料はシンナーの代わりに水で希釈するため、シンナー不足の影響を回避できます。実際に2026年の対策として、塗装業者の間では水性塗料への切り替えが急速に広がっています。
ただし水性塗料の樹脂原料もナフサ由来であることには変わりありません。スズカファインは「影響範囲がシンナー・溶剤系から水系塗料の主原料にまで拡大している」と公表しており、シンナーほど即時ではないものの、水性塗料も中長期的には影響を受ける見通しです。
よくある質問
Q1:ナフサ不足でなぜ塗料が値上がりするのですか?
塗料の主成分である樹脂(アクリル・ウレタン・エポキシなど)と溶剤(シンナー)の両方がナフサを出発原料として作られているためです。原料コストが上がると最終製品の塗料価格に転嫁されます。シンナー類は特に影響を受けやすく、大手メーカーが75%値上げを発表した例もあります。
Q2:シンナーがないと塗装工事はできませんか?
油性(溶剤系)塗料を使う場合はシンナーが必須のため、入手できなければ工事が停止します。ただし水性塗料であればシンナーが不要なため、代替手段として活用できます。2026年現在、多くの塗装業者が水性塗料への切り替えで対応しています。
Q3:外壁塗装を予定しているが、今依頼すべきですか?
材料不足と価格上昇が続いている今の状況では、早めに動く方が有利です。価格はすでに値上がりしており、今後さらに上昇する可能性があります。水性塗料対応の業者であれば材料の確保がしやすいため、業者選定の際に確認することをおすすめします。
Q4:水性塗料はナフサ不足の影響を受けませんか?
シンナー不足の直接的な影響は受けませんが、水性塗料の樹脂原料もナフサ由来であるため、中長期的には影響を受ける可能性があります。現時点では溶剤系塗料と比べて影響が出るタイミングが遅く、代替手段として有効です。
Q5:シーリング材や防水材も影響を受けますか?
受けます。シーリング材・プライマー・防水材もナフサ由来の石油化学製品を原料とするため、塗料と同様に価格上昇と出荷制限の影響を受けています。30%を超える値上げが相次いでおり、外壁塗装の総工費全体に影響が出ています。
Q6:ナフサ不足が落ち着けば塗料価格は下がりますか?
ホルムズ海峡の通航が回復してもナフサ供給が安定するまでには2〜3か月のタイムラグがあります。価格が本格的に落ち着くのは2026年末〜2027年前半との見方があります。ただし一度上がった塗料価格がそのまま据え置かれる可能性もあり、元の水準への完全な回復は保証されません。
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ナフサと塗料の関係は、樹脂(塗料の主成分)と溶剤(シンナー)の両方がナフサを出発原料とするという二重の構造にあります。ナフサが不足すると塗料そのものとシンナーが同時に影響を受け、塗装工事が価格面でも材料確保の面でも困難になります。
2026年現在、シンナーは最大75%値上がりし、塗料の納入に半月かかる事例も出ています。現場での対応策として水性塗料への切り替えが広がっていますが、中長期的には水性塗料の樹脂原料にも影響が及ぶ見通しです。
この記事を書くまで、外壁塗装の見積もりで「シンナー不足で工事が遅れるかもしれない」と言われた意味がよくわかっていませんでした。ナフサという川上の問題が、シンナーを経由して自宅の外壁塗装という身近な話まで直結していた——その連鎖の長さと深さを知ってから、ニュースの見方がかなり変わりました。外壁の塗り替えを検討している方は、今の状況を踏まえて早めに動くことを私自身もおすすめしたいと思っています。

