TwitterやInstagramなどのSNSで「許すまじ」という言葉を見かけたことはありませんか?「許す、マジで?」という意味だと思っている人もいるかもしれませんが、実はその解釈は大間違いなんです。今回は「許すまじ」の正しい意味や由来、元ネタ、そして実際の使い方まで、わかりやすく解説していきます。
「許すまじ」の正しい意味とは?
泣かせたやつ許すまじ! pic.twitter.com/Q2vnNsh2fH
— さちゃん (@BluelightHoney) November 19, 2025
「許すまじ」は「ゆるすまじ」と読み、「絶対に許さない」「決して許すつもりはない」という意味の言葉です。
現代の若者言葉やネットスラングとして流行している印象がありますが、実はこの言葉、700年以上前から日本で使われていた由緒ある表現なんです。
「許すまじ」は「許す」という動詞に、古文で習う助動詞「まじ」がついた形をしています。この「まじ」には複数の意味がありますが、「許すまじ」の場合は「打消しの意志」を表す用法です。
つまり、「許す」という行為を強く否定して、「絶対に許さないつもりだ」「決して許すことはしない」という強い意思を示しているんですね。
「マジで許す」は完全な誤解!
「許すまじ」を「許す、マジ(で)」と区切って、「マジで許す」という意味だと勘違いしている人が意外と多いんです。でも、これは完全な誤解です。
「まじ」という響きが、現代の若者言葉である「マジ(本気・真剣)」と同じだからという理由で混同されているのですが、古文の「まじ」と俗語の「マジ」は全く別物です。
意味が真逆になってしまうので、SNSで使うときは注意が必要ですね。
「許すまじ」の元ネタはあるの?
「許すまじ」の元ネタについて調べてみましたが、実は特定の元ネタは存在しません。
アニメや漫画のキャラクターの有名なセリフ(例えば、ジョジョの「だが断る」のような)から生まれた言葉ではなく、古くから日本語として使われてきた言葉なんです。
古典文学での使用例
「許すまじ」は、古典作品の中でも実際に使われています。たとえば、700年以上前に書かれた軍記物語『保元物語(ほうげんものがたり)』には、次のような一節があります。
「わらはもさこそは思へども、今日明日様を変へんには、誰かは落人の方様の者と思はぬ人はあらじ。しからば名乗らずは左右なく許すまじ。」
ここでは「名乗らないことは絶対に許されない」という意味で「許すまじ」が使われています。現代の使い方とあまり変わりませんね。
このように、「許すまじ」は突然登場した造語や流行語ではなく、昔から文章で用いられてきた伝統的な表現なのです。
なぜ今、SNSで流行しているの?
では、なぜ古文由来の言葉が、今の若者の間で再び使われるようになったのでしょうか。
理由としては、以下のような点が考えられます。
まず、響きの面白さです。「許すまじ」という言葉は、古風でちょっと堅い印象がありながらも、語感にリズムがあって印象に残りやすいんです。
次に、冗談交じりに使えるという点です。本気で怒っているときだけでなく、ちょっとしたことに対してユーモアを込めて「許すまじ!」と言えるのが、SNS向きなんですね。
さらに、文章としては文語的で普段の会話では使わない表現だからこそ、SNSやTwitterで使うと面白いという感覚もあります。日常会話では使わないからこそ、書き言葉として際立つわけです。
「許すまじ」の正しい使い方と例文
それでは、「許すまじ」の具体的な使い方を、シーン別に見ていきましょう。
本気で怒っているとき
本来の使い方として、どうしても許せないことがあったときに、強い意志を表現する場合です。
例文1: 「痴漢行為は、どんな理由があろうと許すまじ。」
例文2: 「貸したお金をいくら催促しても返してくれない友人、許すまじ。」
例文3: 「子どもに暴力を振るうなんて、許すまじき行為だ。」
これらの例文では、絶対に許せないという強い憤りや、確固たる意志が感じられますね。
冗談交じり・ユーモアを込めて
最近のSNSでは、本気で怒っているわけではないけれど、ちょっとした不満やツッコミをユーモラスに表現するために使われることが多いです。
例文1: 「待ち合わせに3時間も寝坊して遅刻してきた彼、許すまじ。」
例文2: 「GWなのに電車がめちゃくちゃ空いてる。みんな旅行に行っててずるい、許すまじ!笑」
例文3: 「大事な会議の資料を忘れてきやがった…許すまじ…!」
例文4: 「感動的な映画のシーンで誰かの携帯が鳴りっぱなし…許すまじ!」
このように、絵文字をつけたり、前後の文章を工夫したりすることで、「本当に怒っている」というよりは「ネタとして言っている」というニュアンスが伝わります。
友人同士や気心知れた仲間内で使うと、面白おかしく盛り上がる表現になりますね。
SNSでの実際の使用例
TwitterなどのSNSでは、次のような使い方がされています。
例文1: 「きのこの山にたけのこが混ざってた!許すまじ!」
例文2: 「昨日の雷のせいで眠れなかった…雷、許すまじ…」
例文3: 「待ってた新作ゲーム、発売延期だって…許すまじ開発チーム(泣)」
日常の些細な出来事に対して、大げさに「許すまじ」を使うことで、ユーモラスな雰囲気を作り出しているのが分かりますね。
「許すまじ」と似た表現・言い換え
「許すまじ」と似た意味を持つ言葉もいくつかあります。場面に応じて使い分けると、表現の幅が広がりますよ。
許さない/絶対に許さない
最もシンプルで、日常的にも使いやすい表現です。
例文: 「この裏切りは絶対に許さない。」
許せない
感情的に許せないという気持ちをストレートに表現する言葉です。
例文: 「あの人の態度は本当に許せない。」
断じて許さない
「断じて」という強い否定の言葉を加えることで、より強い意志を示します。
例文: 「このような不正行為は断じて許さない。」
許容できない/容認できない
冷静に、理性的に否定の意志を示す場合に適しています。
例文: 「その行動は容認できないものだった。」
許しがたい
「許すまじ」と同じく、強い否定の意味を持ちます。やや文語的ですが、現代でも使われます。
例文: 「あの嘘は許しがたい行為だった。」
許すまじきこと/許されざること
「許すまじ」を名詞化した形で、「許してはならないこと」という意味になります。
例文: 「彼の迷惑行為は許すまじきことだ。」
黙認できない/勘弁できない
「黙ったまま見逃すことはできない」「大目に見ることはできない」という意味です。
例文: 「この問題は黙認できない。しっかり対処すべきだ。」
「許すまじ」の反対語は?
「許すまじ」の反対の意味を持つ言葉は「許すべし」です。
これは「許すのが当然だ」「容認できる」という意味になります。古文の「まじ」の反対語が「べし」なので、そのまま反対の表現になるんですね。
例文: 「彼の行動には正当な理由があった。これは許すべきだ。」
「許すまじ」の古文での意味
もう少し詳しく、古文での「まじ」について説明しますね。
古文の助動詞「まじ」には、実は複数の意味があります。
- 打消しの意志:「~するつもりはない」「決して~ない」
- 禁止・不適当:「~してはならない」「~すべきではない」
- 打消しの推量:「~ないだろう」
- 不可能の推量:「~できないだろう」
- 当然の打消し:「~するはずがない」
「許すまじ」で使われている「まじ」は、このうちの**1番目「打消しの意志」**の用法です。
学校で古文を習ったとき、「すいかとめて」という覚え方を教わった人もいるかもしれません。これは「まじ」の意味を覚えるための語呂合わせなんです。
- す:推量(打消しの推量)
- い:意志(打消しの意志)
- か:可能(不可能の推量)
- と:当然(当然の打消し)
- め:命令・禁止
- て:適当(不適当)
古文の知識として覚えておくと、文章を読むときにも役立ちますね。
他人の不幸は蜜の味 俺の不幸は許すまじ
— オンリー伊藤(Only Ito) (@Only_Ito) November 21, 2025
「許すまじおじさん」とは何者?
「許すまじ」に関連して、「許すまじおじさん」という言葉を見聞きしたことがある人もいるかもしれません。
実はこれ、正しくは「忘るまじおじさん」の間違いだと考えられています。
「忘るまじおじさん」とは、ミュージシャンの長岡亮介さんのことです。長岡亮介さんは、東京事変のギタリスト「浮雲」としても有名ですね。
椎名林檎さんと長岡亮介さんによるデュエット曲『長く短い祭』の歌詞に、「忘るまじ我らの夏を」というフレーズがあるんです。曲の冒頭、約16秒あたりで長岡さんが「忘るまじ」と歌っています。
この印象的なフレーズから、SNSなどで「忘るまじおじさん」という言葉が広まったわけです。
ちなみに、「忘るまじ」も「許すまじ」と同じ構造で、「絶対に忘れない」「決して忘れるつもりはない」という強い意志を表しています。
「忘る」に打消しの助動詞「まじ」がついた形なんですね。
「許すまじ」を使うときの注意点
「許すまじ」は面白い表現ですが、使うときには少し注意が必要です。
会話よりもSNSや文章向き
「許すまじ」はもともと文語的な表現なので、リアルな会話で使うとちょっと浮いてしまうことがあります。特に初対面の人や目上の人に使うのは避けた方が無難です。
SNSやTwitter、LINEなどの書き言葉として使う方が自然ですね。
相手との関係性を考える
本気で怒っているように受け取られたくない場合は、絵文字や「笑」などをつけて、冗談のニュアンスを出すといいでしょう。
逆に、本当に許せないことを表現したい場合は、前後の文脈をしっかり整えることが大切です。
ビジネスシーンでは使わない
「許すまじ」はあくまでカジュアルな表現です。ビジネスメールや正式な文書では使わないようにしましょう。
意味を間違えないように
何度も言いますが、「許すまじ」は「許さない」という意味です。「マジで許す」ではありません。
意味を間違えて使うと、相手に全く逆のメッセージが伝わってしまうので、注意が必要ですね。
よくある質問
Q1. 「許すまじ」は死語なの?
いいえ、死語ではありません。確かに日常会話で使う人は少ないですが、SNSやインターネット上では今も活発に使われています。特に若者を中心に、ネットスラングとして定着しつつあります。古文由来の言葉が現代で再び注目されているという、面白い現象ですね。
Q2. 「許すまじ」と「許すまじき」の違いは?
「許すまじ」は終止形で、文の最後に来る形です。それに対して「許すまじき」は連体形で、後ろに名詞が続きます。
例えば、「これは許すまじき行為だ」のように使います。
「許すまじき○○」という形で、「許してはならない○○」「許すべきではない○○」という意味になります。
Q3. 「許すまじ」を英語で言うと?
英語では「unforgivable」(許せない)や「I will never forgive」(決して許さない)などと表現できます。
文脈によっては「It’s unacceptable」(受け入れられない)なども近い意味になりますね。
Q4. 「マジ許すまじ」という表現は正しい?
SNSでは「マジ許すまじ」という表現もときどき見かけますね。これは、現代の「マジ(本気)」と古文の「まじ」を組み合わせた、一種の言葉遊びです。
「本気で許さない」という意味を、あえて「マジ」を重ねることで強調しているわけです。正式な使い方ではありませんが、ユーモアやネタとして使われています。
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「許すまじ」は「絶対に許さない」という意味の言葉で、元ネタは特になく、700年以上前から日本で使われてきた古典由来の表現です。
「許す、マジ(で)」つまり「マジで許す」という意味だと勘違いされることが多いですが、これは完全な誤解で、実際は真逆の「許さない」という意味なので注意が必要です。
古文の助動詞「まじ」は「打消しの意志」を表し、「許す」という行為を強く否定しています。
SNSやTwitterでは、本気で怒っているときだけでなく、冗談交じりやユーモアを込めて、日常の些細な出来事に対しても使われています。
文語的な表現なので、リアルな会話よりもSNSや文章で使う方が自然で、友人同士や気心知れた仲間内で使うのがおすすめです。
「許すまじ」という言葉を正しく理解して、ここぞというタイミングで使ってみてくださいね。きっとSNSでの表現の幅が広がるはずです。


